活動報告・ニュース

「差別禁止法の制定を求める市民活動委員会」の再活性化に向けて

2018年05月07日

「差別禁止法の制定を求める市民活動委員会」の再活性化に向けて

[1]ご無沙汰で申し訳ありません

 「差別禁止法の制定を求める市民活動委員会」(以下、「市民活動委員会」)の皆さん、お元気でご活躍のことと存じます。「えっ、市民活動委員会ってなんだったっけ?」「自分はそんな委員会に参加していたのかしら?」と怪訝に思われている方がおられるかもしれません。

 致し方ありません。ここ2年あまり、ニュースの発行やホームページの更新、メールを通じての情報の提供や相互交流など、会員の皆さんと作り上げていく「市民活動委員会」の取り組みが休止していました。それがこのような状況を生み出してしまったものと受け止めています。入会にあたっての皆さんの思いや期待に応えきれていないことを申し訳なく感じています。

 2011年6月9日に衆議院第二議員会館会議室にて会を立ち上げて以降、パンフの発行、研究会の開催、福島差別問題への取り組み、障害者差別解消法制定運動への連帯、公開シンポジウムの開催などに取り組んできました。しかし事務局を構成してきたメンバーが仕事や自身の活動に追われているうちに近年のこうした事態を許してしまいました。

 また本会共同代表であった楠敏雄さん(DPI(障害者インターナショナル)日本会議副議長)が2014年2月16日に、さらに同年5月9日には神美知宏さん(全国ハンセン病療養所入所者協議会会長)が相次いでお亡くなりになりました。ホームページ上ではお知らせしましたが、ここに改めてご冥福をお祈りいたします。

[2]戦争と平和、差別と人権―抜き差しならぬ緊迫の時代へ

 「市民活動委員会」が休止している間にも、戦争と平和、差別と人権をめぐる社会状況はめまぐるしく変化してきました。

 2014年12月から施行された特定秘密保護法、2016年3月施行の安保関連法(いわゆる「戦争法」)、2017年6月には改正組織犯罪処罰法(共謀罪)が相次いで制定され、さらには9条を含む憲法改悪計画が強引に進められています。こうした政治の反動化を反映し、ヘイトスピーチの横行や「全国部落調査」復刻版出版事件をはじめとするネット上での部落差別の煽動が止むことなくエスカレートしてきました。「市民活動委員会」が発足当初より警鐘をならしてきた「福島」差別問題も、なお深刻な現実が進行中であることがメディアで報じられています。

 もちろん戦争と差別への道が一方的に進行しているわけではありません。「市民活動委員会」の設立当時では「差別禁止法」どころか差別問題を真正面からとりあげる法律の制定は、まだまだリアリティのある課題ではありませんでした。

 この状況を打ち破ったのが2013年6月に成立した障害者差別解消法です。障害者運動の大同団結の力を背景に、国連の障害者権利条約の批准を勝ち取り、差別禁止を盛り込んだ障害者基本法の改正を踏まえて日本で初めての「差別解消」を標榜する法律が実現しました。

 さらに2016年だけを取り上げても、4月に障害者差別解消法の施行、5月にヘイトスピーチ解消法の制定(6月施行)、12月に部落差別解消推進法の制定、施行と続きました。またLGBT問題に関する法整備やアイヌ問題の解決促進に向けた新法の制定議論も始まっています。

 戦争と平和、差別と人権にかかわる社会動向はかつてなく先鋭化してきており、それはヨーロッパやアメリカ、中国など国際的動向とも軌を一にする緊迫の構図です。

[3]差別禁止法を求める市民活動は眠らない

時代と社会はますます「市民活動委員会」設立の正しさを証明し、その奮起を強く促しています。「しばらくご無沙汰でした」などと言っている場合ではないのだと自責の念は強まるばかりです。

とは言うものの差別撤廃への活動を「市民活動委員会」関係者が一同に休んでいたわけではありません。それぞれの課題、それぞれの地域、それぞれがかかわっている組織において、むしろ取り組みは一段と加速しその中で奮闘していたことは確かです。だからこそ先の差別解消3法も実現したのですから。

そうした取り組みの一つとして一般社団法人部落解放・人権研究所のこの間の取り組みを報告させていただきます。同研究所は2013年に内閣府認可の一般社団法人となりその第四調査部門として内田博文九州大学名誉教授を部門長とする「差別禁止法の調査研究」が設けられました。

研究会活動は第一ステージとして諸外国の差別禁止法の研究活動を行い、第二ステージとして差別禁止法をめぐる論点整理を積み重ねました。2015年からは第三ステージとして、性的マイノリティ、インターネット、ハンセン病、外国人差別、自死遺族差別、見た目問題、水俣病問題、HIV問題、部落差別、アイヌ民族差別のそれぞれについて被差別当事者(団体)から差別の実態報告を受け立法事実の収集活動を進めました。そして現在第四ステージして、それぞれの課題ごとに、裁判に訴えられた事例についての判例研究を関係弁護士の協力を得て進めています。

第三ステージでの報告は、当日の資料に加えて、当事者自身の訴えや体験記なども収録してブックレットにまとめて発行しています。その発行状況は次の通りです(2017年6月現在)。

『差別禁止法の制定を求める当事者の声① ハンセン病問題のいま』

『差別禁止法の制定を求める当事者の声②  自死(遺族)問題のいま』

『差別禁止法の制定を求める当事者の声③ LGBT問題のいま』

『差別禁止法の制定を求める当事者の声④ 外国人問題のいま』

『差別禁止法の制定を求める当事者の声⑤ HIV問題のいま』

『差別禁止法の制定を求める当事者の声⑥  見た目問題のいま』

『差別禁止法の制定を求める当事者の声⑦ 部落問題のいま』

『差別禁止法の制定を求める当事者の声⑧ アイヌ問題のいま』

(今後の発刊予定)『水俣病問題のいま』『総集編』 

 またこうした研究会活動を通じて、被差別マイノリティ同士の相互理解と連帯をはぐくむ取り組みとして2015年10月に公開シンポジウム「差別禁止法制定を求める当事者の声 in 東京」を開催し、以後定期的に、それぞれの当事者の取り組みを相互交流する集いを開催しています。

[4]そしてこれからのことです

 「市民活動委員会」の現状がこのままでよいわけはない。それに気づきながら放置しておくことはもっとよくない。そんな思いから共同代表の奥田、幹事の熊本、谷川、朴、藤本、それに部落解放・人権研究所事務局の棚田の6名が4月6日、6月5日、8月10日に会合を持ちこれからのことについて悩み、議論し一定の提案をまとめました。

 設立当初に発行した冊子『「差別禁止法」をつくる』には次のように書いてあります。「市民活動委員会はどこかに事務所を構えて専従の事務局員がそこに常駐しているといった組織ではありません。インターネットなどを利用して情報交換をおこない、会員相互に連絡を取り合いながら、時々に必要な取り組みを企画していこうという新しいスタイルの市民組織です」。

この当初に思い描いていた活動スタイルを今日的にもう少し手軽な形で具体化し、ネットワーク型の組織として「休止から目覚めよう」との決意を新たにしました。その方針については次に提案しています。ご理解をいただき、「市民活動委員会」の活性化に共にご参加いただきますよう心よりお願いします。

これからの「市民活動委員会」の進め方について

  1. フェイスブックに「市民活動委員会」のページを立ち上げます。
  • インターネットやSNSに関心と知識がある方に、フェイスブック上のページ立ち上げと情報のアップロードを担当していただきます。
  • フェイスブックのページが立ち上がった時点で、現在、メイリング・リストにご登録いただいているメイルアドレスにお知らせします。
  • メールを通じての情報の提供や相互交流から、フェイスブックを通じての情報の提供や相互交流に移行します。「市民活動委員会」に関心のある皆さんと作り上げていく「市民活動委員会」の取り組みです。
  • 「市民活動委員会」のホームページは維持しますが、主力はフェイスブックとします。
  1. 1年に1回、「市民活動委員会」の皆さんが集う会を催します。
  • フェイスブックを通じた情報提供と相互交流だけではディジタル・ディバイドの問題が残ります。
  • 「市民活動委員会」に関心のある方々による、それぞれの課題、それぞれの地域、それぞれがかかわっている組織での取り組み、被差別マイノリティ同士の相互理解と連帯をはぐくむ取り組み、それぞれの当事者の取り組みを相互交流する集いを1年に1回開催します。
  • 会の開催は、「市民活動委員会」の皆さんが実行委員会などで企画いただける場合は、各地域での開催も検討いたします。
  • メイリング・リストに登録していただいているメイルアドレスは、ご希望によりリストから削除します。登録いただいているメイルアドレスは、集う会のご案内の際にのみ利用いたします。
  1. 組織体制をゆるやかなものにします。
  • 共同代表の皆さんには引き続き、共同代表をお引き受けいただきたいと思います。
  • 幹事とアドバイザーの体制は廃止し、希望者による運営委員へと移行します。
  • 冊子販売等により手元に残っております残金は、①フェイスブックの維持・管理、②ホームページの維持・管理、③集会の開催、に使わせていただきます。

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