活動報告・ニュース

「差別禁止法の制定」という旗を打ち立てた1年(2012年6月9日)

2012年06月28日

差別禁止法の制定を求める市民活動委員会

共同代表   奥田 均

 2011年6月9日に差別禁止法の制定を求める市民活動委員会が誕生してから1年が経過しました。その言葉すら存在しなかった「福島差別」が、マスコミで次々に報じられていく中での発会式でした。差別をなくそうと立ち上がった私たちの目の前で、むしろ新しい差別が創り出されていく現実に、怒りと決意を込めての「福島差別を許さない緊急アピール」を発しての船出となりました。同時に、事務所もない、専任の事務局もいない市民活動委員会は、「ネットワーク型の新しいスタイルの市民組織です」とかっこよくうたい込んではみたものの、果たして組織や活動を持続させていけるのだろうかという不安も感じながらのスタートでした。

発会式に間に合わすべく大あわてで作った冊子『希望の未来設計図 差別禁止法をつくる』には、①世論の形成、②ネットワークの構築、③政策提言、④立法事実の収集、⑤法案の準備など、差別禁止法制定への意気込みをストレートに表現した取り組み課題が並んでいます。しかし実際は、ゆっくりと少しずつ委員会活動の基礎作りをしながら取り組みを積み重ねていったという感じの1年でした。

その原動力を担ってくれたのが幹事の皆さんです。発足当時12名の幹事は、現在19名に拡大しています。メールニュースや臨時ニュースの作成、研究会の企画、福島差別問題での国に対する働きかけ、各地での差別禁止法に関する取り組みの立ち上げなど、それぞれに仕事や活動を抱えたうえでの「幹事活動」には敬意と感謝の気持ちでいっぱいです。地理的な条件で幹事会に参加できない方も多いのですが、それぞれの地域、立場、発想からの支援は無形の大きな力になっています。

予想外のうれしいことは、1冊100円のあの冊子が飛ぶように(ちょっと大げさか?)売れ、1刷・2刷の合計8,000冊が10ヶ月でなくなったことです。差別禁止法の制定という目的の正しさへの確かな手応えを感じさせてくれる出来事でした。

改訂版をこの5月に発行し、活動費の財源対策から増ページの上で200円にしました。もう「飛ぶように」は売れないかもしれませんが、「飛び跳ねるくらい」には広がってほしいと願っています。

商売では「2代目が大事だ」と言われていますが、私たちの活動や組織も「2年目が大事だ」と考えています。その突破口がホームページの変革です。さらに、会員ニュースの改革、福島差別問題のとりくみ、人権委員会設置法や障害者差別禁止法実現への取り組み、差別禁止法の法案づくり、研究会の開催、ネットワークづくりなど当初掲げた課題について、小さな取り組みでもいいから一つ一つ具体的な動きに発展させて行きたいです。また、各地でそれぞれの地に根付いた差別禁止法制定の取り組みが広がっていく年になればうれしいです。

去る5月12日(土)~13日(日)に、青森市でハンセン病市民学会が開催されました。その席で、私たちの市民活動委員会の共同代表でもある神美知宏全療協会長は、自分たちはもう平均年齢80歳以上の高齢になり、ここ2~3年が運動の山場だと感じているが、その間にどうしてもやりきりたいことが2つあると言われました。その一つは「ハンセン病基本法の完全実施」であり、もう一つが、「差別をなくすための取り組みだ」と力を込めて訴えられていました。

できたての改訂版冊子をお渡しすると、「これなんだ、僕がやり遂げたいのはこれなんだ、これをやらなくちゃいけないんだ」と何度も何度もこちらが逆に励まされました。差別の理不尽は、お金や品物などで償うことはできません。「差別は許されない」という当たり前なことを社会のルールにするための「差別禁止法」の制定は、やはりどうしても必要であると再認識させられました。

発会式から1年、「差別禁止法の制定」という旗は確たるものとして打ち立てられました。力を合わせて前進しましょう。よろしくお願いします。

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