研究会

報告「イギリスの差別撤廃法制度の現段階」(2011.6.16 師岡康子さん)

2011年08月04日

2011年6月11日、師岡康子さん(外国人人権法連絡会・外国人学校ネットワーク)をお招きし、「イギリスの差別撤廃法制度の現段階」と題して研究会を開催しました。イギリスが世界に誇りうる民族別調査を10年に1度実施しているという話から始まった研究会では、イギリスにおける戦後の人種差別撤廃法の歴史をたいへん詳細に教えていただきました。

法制定・改正の背景にある社会・政治・経済状況から、禁止すべき差別の定義の拡大の話や、雇用・教育分野における差別撤廃に関する法律の違い、民事・刑事規制の話など、多角的な視点から学ぶことができました。個々の差別禁止法・監視機関をつくってきたイギリスでは、2006年に差別の定義の統一、間接差別や複合差別の導入をはかり、人種・性・障害の3つを統合した法律や委員会が設置されたそうです。

師岡さんの研究のご専門やご関心がヘイトスピーチ規制ということもあり、表現の自由とヘイトスピーチ規制のバランスについての話はとりわけ興味深かったです。「マイノリティの尊厳を守ること」という目的で人種差別的な発言等の犯罪化・規制・刑罰強化が行われてきたり、白人警察による捜査の問題性から公的機関による差別撤廃義務が盛り込まれたりしてきました。

が、「刑事規制の目的は公共の秩序維持で、要件が厳しすぎること」「マイノリティに対する扇動は起訴されない一方、差別に対するマイノリティの抗議が提訴され、有罪になることもあること」「人種差別団体規制がなく野放しであること」など、イギリスにおけるヘイトスピーチ規制法の問題点についても話されました、日本での議論にもとても参考になります。

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