「差別禁止法」Q&A

Q1 「差別禁止法」によって差別が規制されることになるわけですが、一体、だれが「差別かどうか」を判断するのですか?

A 市民からの訴えにもとづき、これを調査し、差別かどうかを判断する公正で中立的な機関が必要です。これが「人権委員会(国内人権機関)」であり、この機関が差別に関する判断をすることになります。また「人権委員会」では、人権相談や被差別当事者への救済措置、さらには人権政策に関する政府への提案活動なども期待されます。
 この人権委員会は、政府から独立した組織であることが望まれます。たとえば公正取引委員会のような組織です。なぜなら、時には国家が差別をしてしまう場合もあるからです。人権委員会の独立性に関しては、1993年に国連で採択された「国内人権機関の地位に関する原則(パリ原則)」でも述べられています。

Q2 「差別禁止法」が制定されると、それが差別になると気がつかなくてしてしまった行為や発言なども処罰の対象になっていくのでしょうか?

A 「差別禁止法」の目的はあくまでも差別の完全撤廃であり、何でもかんでも差別を処罰することが目的ではありません。ですから、差別の防止・解消という観点からの取り組みの推進が大きな柱になっていきます。当然、教育や啓発の取り組みも重要な課題です。
 しかしたとえば「部落地名総鑑」の発行・販売のように、差別によってお金儲けをしようとしたり、著しく被差別者の人権を侵害するような悪質な差別については是正措置や一定の罰則などが検討されることになります。

Q3 「差別禁止法」によって禁止される差別とは具体的にどんなことでしょうか?

A 「差別禁止法」の具体的な内容はこれから議論しつくりあげていくものですから、ここで勝手にお答えすることはできません。しかし諸外国の「差別禁止法」を見ると次のような形で禁止されるべき差別を規定しているものが多いです。一つは「差別事由」による規定です。たとえば、性別、宗教、障害、年齢、社会的身分、出身地域、出身国家、出身民族、容貌、人種、性的指向、病歴、思想、犯罪歴、学歴などを理由とする差別です。もう一つは、「分野」における規定です。雇用、住宅、教育、医療、社会保障、物・施設・サービスの利用、団体加入などにおける差別です。
 しっかりと議論をして、考え方を深めていきたいと思います。

Q4 「差別禁止法」制定の取り組みをすすめるにあたって、いま一番重要な取り組みはなんでしょうか?

A 法律をつくるにあたっては、なぜその法律が必要であるのかという事実を具体的に明らかにする必要があります。こうした事実を立法事実と呼びますが、「差別禁止法」の場合には、現に生じている差別の現実がこれにあたります。しかもそれを社会的に明らかにし、第三者がこうした事実を認識できるように示さなければなりません。
 そのためには、被差別当事者がみずからの悔しい思いやつらい体験を一つひとつ明らかにし、差別の現実をつまびらかにすることが求められます。しかしこの作業は簡単にすすむものではありません。当事者が被差別の事実を告発するということは、とりもなおさずカミングアウトすることを意味しており、差別が厳しければ厳しいほど、さまざまな困難がともなうからです。
 市民活動委員会では、みなさんの力をかりながら、厳しさを乗り越えて「差別禁止法」制定の最重要のこの課題に取り組んでいきたいと考えています。

Q5 「差別禁止法」制定の取り組みに、一市民である私には、なにができるのでしょうか?

A 法律の制定を実現する最終的な決め手は世論の力です。圧倒的多数の市民が、「差別禁止法を制定せよ!」と声を上げれば、必ず、この取り組みは成功します。市民活動委員会は、こうした世論を形成し、国会に届けるための仕組みであると受けとめていただければうれしいです。その意味で、被差別当事者とともに「差別禁止法」制定運動のもう一人の主人公は多くの市民のみなさんです。ぜひ、「差別禁止法」制定の世論を結集するために、市民活動委員会にご参加ください(参加の方法は33ページを見てください)。そしてみなさんの仲間の人にも、参加を呼びかけてください。
 私たちにはお金も大きな組織もありませんが、世界各地での民主化の運動に学び、インターネットなどを駆使してこの世論の力をたくわえたいと考えています。そして、会員間の情報の共有を通じてお互いに学び、交流し、知恵を出し合いたいです。こうした経験を重ねながら、「差別禁止法」がめざしている「差別のない社会」の担い手へとお互いに成長していきたいと願っています。

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