福島差別

『東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律』が制定

2012年07月11日

2012年6月21日、第180回国会(現国会)で「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律(以下、原発事故被災者支援法)」が制定されました。

差別禁止法の制定を求める市民活動委員会では、2011年6月9日の発会式で「福島差別を許さない緊急アピール」を発し、枝野官房長官(当時)への要請、福島差別を考えるシンポジウムを開催するなど、3・11以降、新たに生まれた福島差別について世に問う取り組みを行ってきました。

そして、制定された原発事故被災者支援法案の中に、「福島差別の禁止」を含めるよう民主党幹事長への要請や東電原発事故被災者保護法案起草WT勉強会での問題提起などに取り組んできました。

東電原発事故被災者保護法案起草WT勉強会

こうした取り組みもあって「原発事故被災者支援法」の第二条(基本理念)の第四項に、被災者に対する差別問題という条文が盛り込まれました。

条文は次のとおりです。

条文)第二条四項

『被災者生活支援等施策を講ずるに当たっては、被災者に対するいわれなき差別が生ずることのないよう、適切な配慮がなされなければならない』

国会では、法案制定にあたり、福島差別問題について、6月14日の東日本大震災復興特別委員会で審議され、参議院(6月15日)や衆議院(6月21日)の本会議で議論されました。

6月14日の特別委員会での福島差別問題の議論を紹介します。答弁している民主党の金子恵美参議院議員(福島県選出)は、市民活動委員会と福島差別について意見交換をし、アドバイスなどをいただきながらともに取り組んできました。

◆6月14日参議院・東日本大震災復興特別委員会の審議より(なお議員立法のため「法」の解釈などの答弁は発議者が行っている)。金子恵美議員の答弁

○秋野公造さん(公明党・比例代表)

第二条四項について伺いたいと思います。
ほかの委員の先生方からも質問がありましたが、被災者に対するいわれなき差別が生ずることがないよう適切な配慮がなされなければならないとありますが、我が国では、67年前に広島、長崎で被爆者がいわれなき差別、偏見に苦しんだという経緯があります。

被爆地に育った者として、今でも、母や親族や、そして長崎に住む先輩方から聞く差別、偏見のお話というものはいつまでたっても新鮮に感じるところでありますが、もしも、そんな状況であるにもかかわらず、福島でまた新たないわれなき差別、偏見が生じようとしているのであれば、67年前に広島、長崎で起きたそういった反省が全くいまだ国内で生かされていないということになるのではないかと思います。
どうしてこのような条文が必要なのかということを考えるときに、学校教育だけで本当に十分なのか、そういった観点から国にどのように対応させていくべきと考えているか、金子発議者の見解を伺いたいと思います。

○金子恵美さん(民主党・福島)

お答えいたします。どんな差別でもあってはいけない。我が国には、女性差別、そして障害のある方々の差別、そしてまた、今おっしゃっていただいた広島、長崎の被爆者に対する差別と、本当に大きな差別が残ってしまっています。まずは、これに対して本当に国全体挙げて闘っていかなくてはいけないということを申し上げさせていただきたいと思います。そして、今まさにおっしゃったとおり、福島差別という新たな差別が生まれつつあるというふうに私自身も理解をしております。法務省の人権擁護局で把握している限りにおきましても、やはり相談例の一つとして、福島ナンバーであることを理由に駐車を拒否されたことであるとか、そしてまた、県外に避難された方々の中で子どもを保育所に入園させようとしたところ、不安の声が出て対応できなかったとか、そういうことがあります。
実際には、やはりこの実態をしっかりと把握していくことから始めていかなくてはいけないというふうに思っておりまして、そしてその実態を把握した段階でしっかりとした対応をしていかなくてはいけないというふうに思っております。草案の中では、支援対象地域からの他の地域に移動する被災者、そして避難指示区域から避難している被災者に対し、移動避難先の地域での生活を支援するための施策を講ずることとしていますが、当該施策を講ずる上では、その移動避難先の地域の住民、地方公共団体の協力が必要でございます。こういった協力を得るには、いわれなき差別が生ずることのない環境をしっかりとつくっておく必要があります。こうした考え方を明確にするためにこの第二条の第四項を規定することとしました。この草案の各種の施策が基本理念に即したものとなるように講ぜられることとなりますが、今回、今申し上げたような中で、福島差別については放射線についての無理解というところから派生しているものもあります。ですので、十八条では、放射線等についての国民の理解を深めるための施策を講ずるとしておりますので、これは差別の防止に資するものであるというふうに考えているところでございます。
差別の防止等は国が責任を持って積極的に進めるべきものだというふうに考えておりまして、繰り返しになりますが、まず実態把握をしていただくその仕組みをつくっていかなくてはいけないというふうに考えているところでございます。

○秋野公造さん

ありがとうございます。福島の皆様のために、被災者の皆様のために実効性が上がるように共々に力を尽くしてまいりたいと思います。

(国会の質疑を一部掲載しました。他の質疑や福島差別問題に対する取り組みの『中間報告』をHPで掲載していますので、ご参照ください。)

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