活動報告・ニュース

レポート:第8回ハンセン病市民学会 in青森・宮城

2012年06月28日

2012年5月12日(土)~13日(日)、ハンセン病回復者や研究者、弁護士、市民等で組織している第8回ハンセン病市民学会が、青森県のハンセン病療養所「松丘保養園」と宮城県の同「東北新生園」を主会場に県内外から約500人の参加者のもと開催されました。

開会のあいさつで松丘保養園入所者自治会会長の石川勝夫さんは、「ハンセン病問題を原点としてあらゆる差別の解消」に向けて取り組むことを参加者に呼びかけました。また、全国ハンセン病療養所入所者協議会会長で、差別禁止法の制定を求める市民活動委員会の共同代表でもある神美知宏さんは、「ハンセン病差別の特徴は3つある。1つは、法的差別、2つ目に行政的・政策的差別、3つ目に社会的差別だ」と話されました。とくに社会的差別を今後どのようにして解消していくかが問題だと指摘されました。

まさに私たちが求めている「差別はしてはいけないことである」という社会のルールをつくる活動に合致した提案であり、市民ひとりひとりが自分に引き寄せて考えるところから始めて、解決に向けた運動につなげなければなりません。

シンポジストのひとり、松丘保養園入所者の叶順次さんは、親戚の反対で父親の葬式に出られなかった思いを語り、「今も偏見・差別は厳然と残っている。このまま療養所で暮らすほか術(すべ)をもたず」と、社会で当たり前に暮らしたいという願いが叶えられない心情を話されました。

もうひとりのシンポジストで、この差別禁止法の制定を求める市民活動委員会共同代表で近畿大学人権問題研究所の奥田均さんは、福島第一原発事故後に起きている福島県民への差別に対して、社会の無理解が生んだことと、ハンセン病問題との共通点を指摘され、「胸をはって故郷(ふるさと)を名乗れるかどうかは、このハンセン病問題の解決が問われることでもある」と述べました。

被害を受けている当事者の悲願である差別の解消に向けて、「差別禁止法」制定への取り組みはもう待ったなしの状況です。平均年齢82歳のハンセン病回復者にとって残された時間はそう長くないのです。

報告者:原田恵子さん

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