活動報告・ニュース, 福島差別

被災者保護法案に「福島差別」問題を-民主党WTに要望

2012年03月13日

差別禁止法の実現をめざして立ち上がった「差別禁止法の制定を求める市民活動委員会」は、昨年6月の発会式で「東日本大震災による被曝者差別を許さないアピール」を発表、8月には枝野官房長官へ「要望書」を提出、12月には関係団体と連携し桜井・福島県南相馬市長を招いて「福島差別を考えるシンポジュウム」を開催するなど「福島差別」問題に取り組んできた。こうした中、民主党内が川内博史衆議院議員を座長とするワーキングチーム(WT)を設置、「東電原発事故被災者保護法案」を検討していることが報道された。市民活動委員会は稲見哲男衆議院議員(大阪5区、党福島県対策室長)と相談、「東電原発事故被災者保護法案」に福島差別への取り組みを明記するよう民主党、WTへ要望を行うことになった。

3月13日に行われた要望行動には、市民活動委員会の共同代表の一人である奥田均近畿大学人権問題研究所教授、幹事の谷川雅彦(部落解放同盟大阪府連書記次長)、松村匡訓(部落解放同盟大阪府連書記)が参加した。市民活動委員会はまず民主党幹事長室へ要望を行った。幹事長室からは池口修次企業団体対策委員長、大島九州男民主党副幹事長、大久保潔重民主党副幹事長が対応。政府が進める東日本大震災の復興の取り組みに「福島差別」問題をしっかりと位置付けてほしいと要望書を手交した。

「あってはならない問題」と池口委員長、窓口は大島副幹事長に。

池口修次企業団体対策委員長は、福島差別について「あってはならないこと」との認識を示し、法律の中に盛り込むことについて「民主党内の法案起草ワーキングチームで議論をおこなっている。みなさんの思いをワーキングチームにも伝えて欲しい」。議論が煮詰まれば「民主党としても支援・バックアップします」と話された。大島九州男副幹事長は、「福島県対策室でもフォローしていきたい」と話され、今後「福島差別」問題の窓口となることになった。

実態把握など4点を要望

第9回「東電原発事故被災者保護法案起草WT勉強会」では市民活動委員会の奥田共同代表から「東電原発事故被災者保護法に関する要望と意見」について説明した。奥田共同代表からは①「被災者を含む福島県民に対する差別の禁止および防止」②「差別・人権侵害に関する調査の実施」③「被災者に対する人権相談事業の実施(避難先地方公共団体を含む)」④「被災者を含む福島県民に対する差別の防止および人権擁護に関する教育・啓発事業」の4点を検討中の法案の中に是非盛り込んでいほしいと要望した。

WTに出席されていた福島県選出の金子恵美参議院議員は、自身も「放射能を持ってきただろう」と言われた経験や福島県に住む障がい者から「障がい者差別に加えて福島県民だからという理由でも差別されることになる」という話を聞いた。「本来はあらゆる差別をなくする法律が必要」「福島差別をどう盛り込むか考えたい」と発言した。

長崎県選出の福田衣理子衆議院議員からは、「長崎県出身というだけで、結婚が破談になったり、子どもを産むことを反対されるなどの差別や偏見があった」「(被爆者だとわかると差別されるので)被爆者手帳を取らないと選択した人もたくさんいた」「66年たっても何も変わっていない」「当時の管直人総理に健康被害だけでなく、人生被害について考えて欲しいと訴えた」「C型肝炎訴訟では、当事者が訴えていくことで差別や偏見をなくなるとの思いから実名を公表した。知らせること、理解を求めていくことは私たちがやらなければならないが、いくら説明しても分からない人や分かろうともしない人も多く、身内であっても差別がある」「福島県の方が人生の節目に喜ぶべき結婚や出産の度に苦しむ可能性が大いにある」と話した。

荒井PT座長「全党一致の法案へ努力」

荒井聰衆議院議員(原発事故収束PT座長、東電原発事故被災者保護法WT顧問)からは「20年前に薬害エイズ問題に取り組んだ。原告団が初めて国会に来て、最初に握手を求められた時、一瞬ひるんでしまった。それまでは自分には『差別意識』はないと思っていたが、私自身の中に差別があることを感じ恥入りました」「差別する人とされる人の間にギャップがあり、差別していることに気がつかない差別感をどうするのかが問題だ」と述べた。

稲見哲男衆議院議員から「WTですでに法案の骨子案が示されているが、法制局との議論の中で福島差別問題を盛り込んでいく余地があるのか」と質問に、荒井聰衆議院議員から「時間はある。各党も同趣旨の法案を検討しており、十分に練って全党一致の法案化にむけて取り組みたい」との決意を示した。

WTは8回の議論を経て「東電原発事故被災者保護法案骨子案」が示されている。しかし、「福島差別」問題については「留意事項」として「被災者等に対するいわれなき差別が生ずることがないよう、適切に配慮」することにとどまっている。市民活動委員会の要望をきっかけに全党一致で「福島差別」問題への対応が復興支援の取り組みに位置づくよう引き続き運動の輪を広げていく必要がある。

原発被災者権利保護法要望書

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