活動報告・ニュース

熊本で障害者差別禁止条例が成立〜運動の核となったヒューマンネット熊本を訪問してきました

2011年10月31日

千葉県ではじまった障害者差別禁止条例制定の動きが全国に広がっています。7月1日、熊本県議会で「障害のある人もない人も共に生きる熊本づくり条例」が全会一致で可決成立しまた。条例の施行は来年4月1日。条例制定は全国で5番目です。

条例制定運動の中心を担ってきたのは特定非営利活動法人自立支援センター「ヒューマンネットワーク熊本」(以下、ヒューマンネットワーク熊本/http://www15.ocn.ne.jp/~cilhuman/index.htm)です。9月5日、奥田共同代表と幹事の原田、谷川がヒューマンネットワーク熊本を訪問し、代表・事務局長の日隈(ひのくま)辰彦さん、地域活動支援センターいんくるの副センター長の野本義彦さんに条例制定運動についてお話を聞かせていただきました。以下、概要を紹介します。

熊本県で障害者差別を禁止する条例をつくろうということになったきっかけは。

-「直接のきっかけは「障害者の権利条約」が発効(2008年)したことです。日本も条約を批准するため国内法の整備が求められることになり、差別禁止法の制定が現実の問題になってきました。各地で条例をつくって差別禁止法など国内法の整備に結びつけようということです」
-「蒲島郁夫県知事の選挙(2008年)の時にマニフェストに差別禁止条例の制定が盛り込まれたことも大きかったです。ヒューマンネットワーク熊本のメンバーでもある平野みどり県議会議員らの働きかけもありました」

条例づくりの運動をどのように進めてきたのか。

-「2009年1月、ヒューマンネットワーク熊本が中心になって広く県民に呼びかけシンポジュウムを開催しました。シンポジュウムには障害の違いを乗り越え様々な障害当事者をはじめその家族や事業所、福祉団体などが参加しました。シンポジュウムに集まった団体によって障害者差別禁止条例をつくる会を結成しました。世話人会には県内23の団体が参画しました。」
-「つくる会がまず、県内を5回まわって障害にもとづく差別と思われる事例の収集に取り組みました。差別を受けた経験を尋ねも意見が出てこないので嫌な思いをしたことだとか、辛かったこと、悲しかった経験などを質問すると少しずつ意見が出てきました。一人が体験を語ると次々と意見が出てきました。集まった事例は799例になりましたた。別途事例集としてとりまとめています」

行政や議会の反応はどうだったか。

-「知事のマニフェストに盛り込まれていたこともあり、担当部長は最初のシンポジュウムの時に条例制定へ向けた検討会を立ち上げると発言した。つくる会が主催したワークショップにも日曜日にもかかわらず行政の担当者は参加してくれていた。議会も表だった反対へ抗議などはなかった」
-「5回に及ぶ検討委員会を通じて条例素案を作成した。とてもいい内容の素案ができあがった。しかし、12月に商工団体から要望があり素案の内容が検討委員会に一切相談なしに大幅に変更された。例えばいままで当たり前のように使っていた差別という言葉が素案からなくなったりした。当初、2月議会に提案するはずだったが6月にずれてしまった。国で成立した障害者基本法の一部改正も熊本の条例に影響を与えたと思う。合理的配慮の問題も努力規定になってしまった」

条例制定が実現できたポイントは

-「目的を単純化したことです。差別の禁止という一点でその他の相違を乗り越えることができた。自立支援法反対の時もそうでした。一割負担の撤回という一点で運動を進めました。目的を単純化したことで障害者団体が団結できました。障害者団体がまとまっているので行政も反対しにくいのです。そしてつくる会を通してできた関係性は今後の財産です。意見が対立しても仲良くやれるようになりました。」

来年4月から条例が施行されます。まず「熊本県障害者の相談に関する調整委員会」が立ち上がることになります。委員は15人以内。過半数の当事者委員が選任されるかどうか、そしてこの調整委員会の推薦で「広域相談員」(県の嘱託職員になる可能性)が任命されることになります。当事者性を持った相談員が選ばれることを期待したいと思います。九州では熊本に続けと沖縄県、大分県、宮崎県などにおいても条例制定の運動が盛り上がっています。

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