活動報告・ニュース

市民活動委員会が発会しました

2011年08月03日

2011年6月9日、衆議院第二議員会館第七会議室におきまして、「差別禁止法の制定を求める市民活動委員会」発会式を開催しました。

当日は、7名の共同代表と4名のアドバイザー、6名の幹事、そして20名の参加者の皆さんからご挨拶をいただきました。大阪、北海道、鳥取、三重など、遠方から参加された方もいました。
女性に対する賃金差別訴訟の原告の方、公人による性差別発言の問題を追及して裁判の原告として闘った方、見た目問題に取り組んでいる方、外国人の支援活動 をしている方、婚外子差別の問題に取り組んでいる方、朝鮮学校無償化問題の解決のために運動している方、部落差別問題に取り組んでいる方、性暴力禁止法 ネットワークの方、国内人権機関の設置を求める活動をしている方、など、多様な分野で差別問題に取り組んでいる方々が参加されました。

差別の現実についての訴えも行われました。

  • アイヌ民族の女性に対する複合差別、アイヌ民族が差別・貧窮を余儀なくされた歴史的事実、アイヌ民族が直面する雇用や教育などの面での格差や生活の苦しさ、差別的に使われる言葉の問題
  • 民間賃貸住居を借りる際の外国籍住民に対する差別
  • 身元調査、土地調査、同和地区の問い合わせ事件
  • 戦後の裁判による救済や日本国憲法からも除外されてきた外国籍住民に対する差別

また、法的な観点からも多様な意見が出されました。

  • 差別を心の問題・偏見の問題ととらえ、差別を啓発でなくしていこうとするだけでよいのだろうか
  • 国家機関に向けられた規範である憲法は一般市民には適用されにくい、私人間だと民法の不法行為を使うことになるが立証することがむずかしい、民法上の不 法行為と認めてもらうことがむずかしい、判決が差別の再発防止につながっていない、潜在的加害者が何をすれば違法な差別になるのかがわからない、時間のかかる裁判を被害者が避けてしまう
  • 諸外国の取組や実績に学びながら、「どういう差別があってはいけないのか」を法律に明確に定める必要がある
  • 日本の法制度が外国人や婚外子を差別している実態をどうするのか
  • 国籍による差別については、日本の法制度をすべて見直していく必要がある

近年、取り組みが進んでいる障害者に対する差別禁止の法制化の動きについても説明 をいただきました。障害の定義、差別の定義、適応分野、人権救済のしくみなどについての議論が行われていることが紹介されました。「障害者はどんな人たち のことを指すのか」「障害は何か」「障害者差別とは何か」をきちんと問うことは、人間の価値観を問うことだともおっしゃっていました。
千葉県で障害者の差別をなくすための条例づくりにかかわってこられた経験から、合意形成の大切さ、制度変革の大切さ、排除・対立の構造ではなく互いを理解するための議論の大切さについてもご提起いただきました。

運動のあり方についても、「一部の人たちが取り組む問題ではなく、大きな枠で取 組を進めていこう」「幅広い視点から幅広い運動としての市民運動を進めていこう」「他の運動から学ぶ場、運動の縦割りをこえて対等に議論ができるような場 をつくっていく、そんなプロセスも大切にしていこう」との提案もありました。また、差別という行為を禁止するだけではなく、「差別とはなんなのか」「差別 がどのような結果をもたらしているのか」、その意味を当事者として発言・発信していくことの必要性も語られました。

東日本大震災の現状や雇用の問題、原発事故が起きた地域の人々に対する差別の現 実についても訴えがありました。また、震災復興におけるジェンダーの視点の大切さ、国際人権基準に沿った被災者の人権保障の視点の大切さ、原発事故におけ る国際条約の遵守という視点からの見直しの必要性も提起されました。会の最後に、「東日本大震災による被爆者差別を許さないアピール」を採択しました。

差別というのは許すことのできない社会悪である、そんな社会のルールをうちたてようと、差別禁止法の制定を求める市民活動委員会を発足しました。被差別当事者そしてその関係者が結集し、差別禁止法の制定を正面から堂々と求める日本ではじめての市民運動のはじまりです。
日本のこれまでの差別対策は当事者に焦点をあてた生活支援などが中心でした。しかし、差別そのものをなくすには当事者に向けた対策だけではなく、社会全体に向けたルールづくりが必要です。それが差別禁止法です。

一つひとつの差別の歴史性や社会性も異なり、運動のスタイルや当面抱えている課題が違うメンバーが歩み寄ります。また差別を禁止するということに対する 社会の世論も、生やさしくない現実が目に見えています。しかし被差別当事者が前にでて、がっちりとスクラムを組み、「Nothing about us Without us.」障害者解放運動が、提示した「私たちぬきに私たちのいっさいのことを決めないでほしい」この精神で困難を一つひとつ丁寧に乗り越えていきたいと思います。

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